妖精

 

 それでも再び目覚めは訪れる。

 

 意識は酷く混濁。 どろりと濁って、ぐにゃぐにゃと捻れ、捉えどころが無い。

 思考は曖昧で、熱に浮かされたように気怠い。

 ただ全身を、尚も気が狂いそうな快楽に貫かれてよがり狂っている。

 首を締め付ける触手は無くなっていた。

 

 けど、  

 

 ふと違和感。

 

 呼吸をしていない。

 

――そこでようやく自分が死んでいるということに気がつく。

 

 生も死も、何もかもがコワレていた。

 

 死んでも意思を宿している身体。

 

 それはもはや拷問だった。

 

 けれど、

 

「は……あっ……、いいの……っ、触手……きもちいぃ……」

 

 たまらなく気持ちいい。

……なら、それで良い。

 リースはもう生きていない。

 物に過ぎないのだから、ひとつの事だけを目的として存在している。

 ひとえに、ただ己の主である触手を満足させる為だけに――。

 

 

「ん……っ、ご主人様……」

 本体に這い寄って尻を突き出し、淫らに腰を振りながら自らの秘所を細い指でねぶって自慰行為を見せて触手を誘う。

 痴態を繰り広げ、秘所に感じる千視の視姦は今やリースの胸の内をキュウと切なく締め付けるだけの促淫剤でしかない。

 卑しいものを見る目。汚らわしいものを見る目。ケダモノを見る目。情欲に満ちた目。

 それらの全てがたまらなく気持ちいい。

 死んだ身体が熱を持ち、生きている身体の……それだけで気をやってしまう程の快楽を知る。

 死んでいるけど生きている

 こうして欲情に胸をドキドキさせているこの時だけは……

 生きているというのはこんなに気持ちのいい事だったなんて知らなかった。

 身体に熱を持つ事がこんなに

 

「あうぅぅんっ……! はっ…もっと……触手…しょくしゅ……ご主人様ぁ……もっと、ずぼずぼって……あああっ……」

 リースが頂すると同時に、膣に無理矢理ねじ込まれていた三本の触手が一斉に子宮めがけて精液を噴出した。 

 がくんっ、がくっ、がくんっ、

 壊れたオモチャのようにリースの身体が跳ね上がる。

 

 

 生者であればそれは死の警報であったが、もう死んでいるリースにとってそれは単なる快楽の証でしかない。

 どれほど無茶に責め立ててもリースは壊れた笑みを浮かべて喜んだ。

 

 

……もう、遅かったのだ。

 今更、助けが来るなんて……。  

 

 

「breakshot misfortune holy ball !! (禍を打ち貫く聖なる弾丸・ホーリーボール)」

 

 何処からともなく、誰のものとも知れず、

 シャン、と鈴の音に似た少女の声によるマジックノイズ(魔術発音)が木霊す。

 直後に虚空の16所から魔力を帯びた光の弾丸が生じ……

 

「attack !! (殲滅せよ)」

 

 一斉に触手の本体を打ち貫いた。

 

 まるでマンドレイク。この世のものとは思えないほど恐ろしく、またおぞましい声の絶叫が上がる。

 触手という触手がバタバタと苦しげに暴れまわって、犯していたリースの身体を投げ出し、八つ当たりのように何度も殴りつけた。

 

 痛みと怒りで暴走する触手の合間をくぐって魔術の主がリースの元へと駆ける。

「早くっ……!」

 今の一撃で魔力の大半を消費したのか、その顔は苦しげだった。

 見ればその姿はリースよりも小さな……幼いと言ってもよい少女のもので、背には虫のそれに似た羽が生えていた。

 マナの聖域に住まうフェアリー族の特徴と一致していることから、それと見て間違いは無いだろう。

 しかし何の故があってそれがこんな地上の禍所に居るのか。……随分と弱っているようだが。

 それでも足の運びは的確で、フェアリーは触手に捕らわれることなくリースの元へと至った。 

「早く立って! 逃げるのよ!」

 惚けた顔をして呆然と座り込んでいるリースの手をとって引き、フェアリーは来た道を返そうとする。

 応じてリースはのろのろと立ち上がり、引きずられるような足取りでフェアリーに続いた。

 リースという負荷を負いながらもフェアリーは上手く立ち回って触手を回避し、どうにかその捕縛範囲を逃れる。

 

 そのまま走り続けて、ともかくも触手の姿が見えなくなる所まで。

 

「っ……はあっ……、はあっ……、はあっ……」

 岩陰に隠れて座し、苦しげに息をするフェアリー。

 その姿を虚ろな瞳でみつめ、疑問するように首をかしげるリース。

 

 苦しそう。

 なぜ苦しいの?

 どうしてそんなに息を荒げるの?

……ああそうか、あなたも気持ちいいんだね……

 

 空はドロリと濁った夜闇。 月は何故だか薄暗く不気味。

 枯渇したマナの為に精霊達が弱りきっている所為だ。

 地は乾いて脆く、草は萎えて、風の音も不気味。

 そんな中に在ってマナの象徴であるフェアリーが毒されないはずも無く、

「……きもちいいの?」

 そもそもフェアリーはマナの聖域を離れて生きてゆけるものではない。

 それがこんな腐った地上に降りて、魔術を放ち、その小さな身体に鞭打って疾走し……。

 とうに限界をきたして、フェアリーはぐったりと力を失っていた。

 肌がうっすらと透け……今にも姿を失ってマナへと還元してしまいそうだ。

 

 放すことを忘れて握り合ったままの手からフェアリーはリースの名と、その過去を覗き知る。

 風吹く山にそびえたつ城の皇女。

 弟を連れ去られ、城を追われ。

「ねえ……」

 そして教皇を頼って聖都・ウェンデルを目指す道中、触手に捕らわれて……。 

 

 

「っ……あ……」

 フェアリーは、ようやく自分の失敗に気づく。

「あん…、ふふ……」

 リースはフェアリーの身体にしなだれ掛かって、触手のように腕で絡んでいた。     

 そう……とうに壊れていたのだ。リースは。

 心は触手に毒されて、狂い

「やめて……、なんで…っ、こんなの……せっかく助かったのに……。 リース、貴女はもう助かったんだよ……?」

 消費しつくし、毒され、弱りきったフェアリーの身体。
 既に抗う力など無い。

 そのうえリースの力が途方もなく強くて。

「んんんっ……?!」

 フェアリーの小さな身体は触手の粘液でぬめったリースの身体に深く抱き込まれた。

 抵抗のすべも無く唇を奪われる。

 リース舌が淫らにくねってフェアリーの咥内を犯し、逃げ纏う小さな舌を捕らえて締め上げる。

 甘い味のするフェアリー舌をねっとりと蹂躙しながら、その細い喉の奥にトロトロと精液臭い唾液を流し込んだ。

 一方でリースの手はしなやかに動き、フェアリーの身体を這い回って徐々にその纏いを解いてゆく。

「んんっ…んんふ…んやあああっ……!」

 リースが地にフェアリーを組み敷く頃、フェアリーは纏いの全てを奪われて凹凸の乏しい身体をさらけ出されていた。

 

 

 

 

やめる   戻る  フェアリーを襲う

 

 

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