――だとしたならば、すべてが茶番。


もとよりこの少女に助かる術は無く、

回りくどい絡め手を使う必要さえも無く、

今まさに、抵抗を許して、必死の立ち回りをさせる必要すらも無い。


どの道、最後は無様に膨らんだ孕み腹の上で惨めなアヘ顔を浮かべ、
緩みきった膣から際限なく精液を噴き出す事になるのだから。


なんなら、冒頭でリースが獣人の群れに追われている時点からして強引に絡め取って裸にひん剥き、
思念の根元が望むような凌辱の数々を尽くしていてもかまわなかった。


しかしそれをしないのは、ひとえに、この無数の触手達がどうしようもない変態だからだ。


それは、どうとでもできる少女を無残に凌辱するに当たって、
全裸に紳士帽と格式高いネクタイを身に着けて席に着き、
神へ、恵みに対する感謝の祈りを捧げ、
一挙手一等足一動作にテーブルマナーのような様式美を追求するが如く。



希望を持たせ、
打ち砕き、
気丈な美貌を哀れに歪め、高潔な意思を恐怖と混乱で引っ掻き乱し、
やめてくださいと哀願する、まさにその願いを、処女膜ごと無残に犯し抜いて白濁に沈める。



これこそが、変態の変態による、二次元凌辱のテーブルマナーであったれば――




「っ……はっ……!!」

酸欠と中毒症状に歪んだ視界は悪夢のような光景で埋め尽くされている。

そこは森であったはずなのに、
いつしか木々の姿は無くなり、代わりに木々ほどの数に及ぶ醜悪なバケモノが群れを成して周囲を覆い尽くしている。

思考能力の殆どを絡め取られたリースには察する術も無いが、
厳密には、木々は在った。
が、それらは変質・変態・変容し、今や白く野太い醜悪なバケモノと化している。

それらは胴に浮かんだ卑猥な孔から酷い雄臭を吐き出して周囲を精液が腐ったような刺激臭で満たし、
頭部のような先端を揺らしながらケタケタと哂い声を上げている。

殊更恐ろしいのが、複数列を持った歯並びの口だ。

例えば…人間の口に何千本もの歯が、喉の奥に至るまでびっしり生えていたとしたら
それは酷く恐ろしい姿だろう。

微妙に人間のそれと近い頭部のつくりをしているだけに、
おぞましさも『近く』、
一目で、あんなものに噛み付かれたらひとたまりもない、と最大限の緊張を強いてくる。

加えてサイズも長大で、リースを頭から丸呑みにできてしまうような巨体まで存在していた。

それに比べて、細身の少女が振るう槍の、なんと儚い事だろう。

敵の攻撃はどれもが槍より長く太く、加えて変幻自在の軌道を描けるような柔軟性まで揃えている。

数に至っては圧倒的で、息を整えさせる間など僅かも許さない。

首を絞められているようなものだった。

しなやかな筋肉を纏った脚は度を越えた加熱にガクガクと震え、
槍を握る手も全握を欠いている。
どうにか力が入る親指と人差し指で、落とさないようにしているのが精一杯といった有様だ。

それでもアマゾネスの矜持か、少女は攻撃と攻撃の合間に僅かな隙があれば手近な『樹』に向かって鋭い一閃を突き出してくる。

その一撃は惚れ惚れするほど真っ直ぐで美しく、
赤く歪んだ月光の下でさえ静謐なる蒼白光を残像させるほどの聖気に満ちていた。

まさしく、乙女であった。

あまりの清らかさに…変態性の塊である『樹』は、これを受けずに居られない。

それは例えるなら、清らかで美しい聖女にペニスバンドを装着させ、自らの肛門を貫かせるような、変態的な悦びである。

一閃が汚らわしい白を貫くと、『樹』は歓喜の断末魔を上げながら全身の穴から白濁の血を噴き出して萎れ、皮だけになって地面に潰れる。

その様を羨ましがるように、わざと槍を貰いに来る『樹』が後を絶たない。

適度にリースを攻撃し、バランスを崩した態勢からの中途半端な一撃は容赦なく甲を持った触手で弾き返し、
先端に眼球を持つ『眼』の触手で下から汗でぐっしょりのパンティを覗き込み、口の触手で鞭打つと同時に柔肌を舐め上げた。

痴漢行為の代償に、したたか胴を貫かれる。

それさえもがたまらない。

あまりにも愛おしくて、自らずぶずぶと槍を飲み込みリースに迫る。

しかしそれよりも早く小さなブーツが『樹』の腹を地面にして跳躍し、回避行動と同時に
その勢いで槍を引き抜かれてしまう。

残念は無い。

個々でありながら全体である『樹』の意思はあいまいに繋がっている。

だから萎れて地に伏しながらも、次は上手くやろうと思うだけだった。




対するリースは、むしろ死を喜ぶようにして襲い掛かってくる理解不能なバケモノを相手にパニックを起こしていた。

まるで目的を理解できない。

殺されたいのか、殺したいのか、喰らいたいのか、捕らえたいのか。

リース自身が迫り来る死の恐怖に苛まれながら、まさに必死の抵抗を続けているというのに
その目の前で歓喜の断末魔を上げながら死んでゆくこのバケモノ達は、一体何を考えているのか。

死は、こうして迫ってくるだけでこんなにも恐ろしいというのに
目の前のバケモノ達は何故こうも死を歓喜し受け入れるのか。

……ともすれば、その悦びに引きずり込まれそうな気がしてならず、
槍を繰る手がどうにも定まらない。

極限状態…それも思考能力の殆どを失った今の状態は暗示や催眠に対する抵抗力が丸裸のように心許ない。

そんな中で死を悦ぶ姿を見せ付けられ続ければ……嫌が応にもイメージせずには居られない。

あの恐ろしい巨口に上半身を飲まれながら死の愉悦に歓喜の嬌声を上げてしまう自分の姿を。

パニックで支離滅裂になっているリースの脳には、仮想の光景がひどく魅力的なものに見えてしまっていた。

しかしそれを、三股が一本欠け、刃をボロボロに腐食させられてしまっている槍と同じようになってしまった精神で、どうにか打ち払う。

触手は既に、リースの精神にまでその手を伸ばしてきていた。

リースは肉体を襲う触手と精神を襲う触手を細い身体と若く頼りない精神の両面で戦わねばならず、
既に心身とも極限を超えてその勢いを失いつつあった。

張り付く喉の痛みに涙を滲ませ、
どうあがいても助かりそうも無い圧倒的状況に顔を蒼褪め、
酷使に耐えかねて硬直した肉体を怯えるように震わせていた。

手負いの獣が牙をむいたような気迫は、
腋腹を食いちぎられて悲鳴を上げる餌食のように衰退し、
気迫を失いつつある目元が、被虐を愉しんでいた触手達に嗜虐心を灯し煽り立てる。

伴って、遊び、少女に武舞を強いるようにしていた触手達の動きが蛮荒なものへと転じて行き、



「っ…く…」

ピシィ!! と目端下の頬を打ち据えられてリースが呻く。


敵の攻撃方針が転調したことに気づくと地中への注意を八割がた地上へと振り分けて身構え、
リースは次に来るであろう、直接的な攻撃動作に備えた。



……が、どうしようもなかった。


身構えた時点で、それらは槍の間合いの内側にまで迫っていたし、


なによりもその数は、まるで倒れてくる広大な壁だった。


そんなものを、折れかかった槍一本でどうしろというのだ。


処理しきれない現実に脳が停止し、身体が固まる。


直後――


パシピシべちバチピシビシッバチビチベチパシツパピチペシビチバチピッシィィィッ!!


無数の鞭打つ音と同時に身体が浮き上がり、衣服が破け、晒け出された片乳房を夜の外気が冷やす心地よさを感じる。

人間の感知能力を超えた圧倒的数の刺激に脳が麻薬を吐き出し、
リースは、えもいわれぬ恍惚を強いられた。

細い肉体が宙を舞って赤く歪んだ月に美しいシルエットを浮かべ………




そのまま、無数の触手に取り込まれていった………。




GAME OVER(宴の始まり……)



   

 

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