「っ…くっ……うううっ……」


捕縛された脚を左右に割り裂かれてつま先を下に向けられると
胸を迫り出す上半身からの流れで背すじが深まり、
うなじから、突き出される形になった尻の膨らみにかけて悩ましいS字が形成される。


脚力にはそこそこの自信があるリースだったが触手の拘束力は尋常ではなく、
抵抗などまるで無いかのように悠々と、力んだ脚を開ききられてしまった。


一瞬、このまま何処までも脚を割り裂かれて、ついには肉体を真っ二つに引き千切られてしまうのではないかという恐怖が頭に冷たい血を巡らせるが、強制開脚はおよそ百度の所で止まり、固定される。


固唾を飲み下して、「はぁ…っ」と緊張しきった息を漏らす。


実際にこれだけの力があれば、触手はリースの肉体を左右に引き千切ることもできただろう。

しかしどういう意図があるのか、それは行われなかった。


リースが感じている危機感の種類は、『捕食される』という感覚に限りなく近い。


だからもし、その危機感が告げるまま、触手の目的が捕食だとしたなら、
このままリースの肉体を真っ二つに引き裂いて、食べ易くするはずだ。


けれども、そういった素振りは……思えば、まだ抵抗が満足だった頃からして見受けられない。


今も最初も、感触まで覚えるほど濃密に注がれている敵の意思は
『捕食』に近い、『捕食でない何か』、それ一筋だった。



「――――」


一瞬、とある『可能性』が脳裏に浮上するが、頭を振ってすぐさまそれを沈め直す。

まさか――『そんな』はずは無い。


確かに『この気配』は『あれ』と酷く似た、あまりにも不快でおぞましい色をしているけれど……

でも『あれ』は、同じ種類の生物間で行われる事であって――






「ひ…っ?!」



リースが否定した内容を、拾い上げて読み取ったかのようなタイミングだった。

先端が一本の指状に細り表面に指紋相当の細かい皺を持った触手達が
リースの、突き出す形に固定された臀部へと集まり始める。


「っ…あ…?! なっ…にを…!?」


さわさわと服越しからでもわかるいやらしい尻撫ではしだいに
『手つき』とも呼べる動作の統一感を得てゆき、


「んくっ…!!」


ぞくんっ、とその少女らしい丸尻を震わせたリースが喉を鳴らす頃になると、
痴漢指の集合体は根に一枚の手の平があると思えるほどの統率された動きを可能とする、まさしく『手』と化していた。


もにゅり、


「ひぅ…?!」


それを『手』と認識した直後、感触に露骨な欲望の気配が混じりこみ、
リースは狭まった喉から戦士らしからぬ声を出してしまう。


同時に、
『戦士』としての教育を受ける一方、『姫』としての教育を受けてきた
その光景の内幾つかがフラッシュバックし、
胸の内で圧倒的な拒絶意思が膨れ上がっていった。




一国の、未婚の姫君である以上、当然のことながら彼女は処女だが、
同時に『戦士でありながら王女である』という危うい立場でもあるため、
様々な方向性に於ける性教育もまた、その心身に、執拗なまでに刻み込まれている。


高潔な彼女にとって、
その教育成果は、普段は意識の端にすら掠らぬほど奥深くに封じ込めておいて、
できれば一生埃を被せておきたいと疎んじるまでに恥かしく耐え難いものだった。



さほど教育理屈の発達していないローラントでは実践的な教育による深み有る習得の一方、代償となる歪みも大きく、
男とはこういうものだ、最大限これほどまでの脅威を有し、こういうことを望む、こうすれば満足する性質を持っている、
と擬似実践的に教え込まれてきたリースに至っては、男性忌避の気質が色濃く染み付いてしまっている。


このため『その方面』に関しては無意識的なフィルターが掛かってしまうほどの潔癖性だったが、
しかしどんなに清純な少女だって絵本に出てくる精霊や女神の類ではない。


誰しも動物的な雌の本能を持っていて、
望まぬ生殖を迫られたなら、
それらは生命の危機を訴えるが如く悲鳴を上げるようにできている。


殊更本能鋭く育てられてきたリースは、秘めながらにも、潜在的に雌の部分が過敏であるらしく
触手が尻肉を掴んでくるその手つきから『自分を雌と認識している雄』の気配を拒絶フィルター越しに漠然と、しかし色濃く感じさせられているのだった。


否定し沈めていた考えが、再び浮力を増して上昇し始める。


けれども『それ』だけは認めたくない、
という一心で首を振るほどに強く否定し直し、『その考え』を心の手で押さえつける。


もしも『そう』だとしたら、あまりにもおぞましいからだ。


もしも――もしも、『そう』だとしたなら、
リースはこの醜悪な化け物と、同類の生き物である、……あるいはそう成り得る、という事になってしまうから。





ヒトがゾンビなどの『人間を元とした怪物』に強い恐れを抱くのと同じだ。

自分が自分でない何かに作り変えられてしまうという可能性を目の前に突きつけられる恐怖と嫌悪感。


殊更、『豹変』というものに対してトラウマを持っているリースには、
自分が『これ』と同じものになり得てしまうなど、耐え難い『可能性』だった。



だから必死で、否定する。


しかしそんな抵抗を嘲笑うかのように、衣服越しに尻肉を揉みしだいてくる感触は
これでもかというほど雄を突きつけ、押し付け、いやらしく擦り付けてくる。


「っ……、くっ……、ぅぅぅっ……!!!」


対するリースは全力で抵抗して手足に力を込めるが、
触手の力は強固で、捕らえた少女の肉体に僅かな抵抗も許しはしない。


苦し紛れに捕縛の薄い腰だけでもよじってみるが、
それは尻を触手から逃がす役に立たず、むしろ誘い込むように踊らせてしまうだけの結果となった。
(当然、必死な本人にその自覚は無いが)







「こ…の……放しな…さい…ッ!!!」


雄の波動を突きつけられる強い不快感が混乱の度合いを上回って怒りを覚える。

動揺していた手元が安定し指先の器用さを取り戻すと
リースは指先だけで巧みに槍を回して穂先へ遠心力を宿らせ、そのまま二関節の屈伸だけで軌道を操り、一番憎らしい臀部の触手にしたたか一撃を加えた。


穂先の薙撃は全身を使って繰り出されるものから見ればかなり粗末なものだったが、
自身同等に扱えるほど手馴れた槍捌きの威力は、子供が槍を全力で振り回す程度のものには達している。


ヒトの胴なら半ばまでといった所か、
それでもこの痴漢生物の劣情を吹き飛ばして退けるには十分な威力と考えられた。


が、


――ふにょり、


と、腹立たしいまでに柔軟な感触を返すのみで、触手はまったくの無傷。


その結果は視界の外の出来事なので視認できないが、
手に返ってきた感触と、これまで沢山のものを刺し貫いてきた経験から
リースは、己の試みを仕損じたと察する。


「っ…!!」


何びとをも貫き葬してきた戦士の矜持が、ぎり…と悔しげに歯噛みの音を立てる。


けれども直後、その顔は戦士のそれから女の子の顔へと作りかえられてしまうのだった。



「――きゃぁっ!?」


かぁぁぁっと顔が真っ赤に熱せられたのは、黄色い声を上げてしまった自身への恥じらいではない。


プライドの高い彼女がそんなことさえ気にならなくなるほどの羞恥が、華奢な下半身を襲っていたのだ。


激しい運動で緩みがちになっていたパンティの中、
粘膜同士の粘着力で閉じられていた肛門が、にぱぁ…と、はがれるように開いてゆく。

同時にその下では大切な部分が自らゆっくりと恥じらいの肉蓋を開けて行き、
外気の進入を許してしまう。


すー…と肛門に冷たい空気が入り込んでくるような感触に、全身が熱く凍る。



強張って少し固くなった尻肉は……触手達によって大きく左右に押し広げられていた…!!



「っ…ひ…?! や…いや…ぁぁっ…?!?!」


羞恥の波が一瞬で怒りを押し流し、瞬く間にアマゾネス戦士リースを、変態にイタズラされる弱々しい女の子にしてしまう。


変態的欲求思念の塊である触手は、まさしく変態であった。


その『眼』から発せられる変態視線は変態的にプリーツスカートの布の目を縫って、内で震えるパンティを、
そこに浮き上がってしまっている恥丘のぷっくりとした幼げな盛り上がりと、年齢の割に成長が遅い無弁の陰唇を、
見透かすように舐め上げてくる。


感触さえ覚えるほどの、濃密な視線だった。


ついには開いてしまっている肛門の孔までもを覗き込まれたような気がして、
そこと恥丘裾の間にある恥じらいの中立恥帯がひくひく悶える。


掴まれている尻肉が元に戻ろうとするように、きゅっきゅっと強張り、
開かされている肛門襞を卑猥にわななかせた。



身体感覚に優れたリースには、自分の身体に起きているそれら全ての痴態がありありと把握できてしまい、
一層深い恥辱感にさいなまれる。


けれども、そのどうしようもなく恥ずかしい失態は全て、装衣とスカート、パンティの三枚からなる乙女布に隠された内の秘めたる出来事だ。

見られてはいないし、厚ぼったい造りの装衣と、スカートのプリーツがパンティに浮き上がった形を隠してくれているから、
恥かしい肉のヒクつきが気取られていることなど、絶対にありえない。



……筈だ。

筈……なのに、どうしても、胸内を痒みに似たざわつきで満たす羞恥の衝動が収まらない。


(あああっ…視られている…!! 見られてないのに…視られている…っ…!!)


魔術による透視を受けた時の視線とは異なる……変態力を糧とした圧倒的妄想による想像視とでもいうのか。


濃厚な意思と共に注がれるそれは幻覚的な感触を伴い、
ヒクつく肛門襞をぐにぐにと押し広げてその感触を、
小開きしたままぷるぷると震える未熟な肉蓋の内側をじっとりと舌で舐め擦るような味わいを、
二恥帯の中間恥点にある、尻肉と恥丘の合わせ目…無穴のささやかな凹みに篭った乙女の匂いを、


リースの乙女として秘めてきた部分の大事な全てを、
涎まみれの舌でむしゃぶり尽くされているかのような恥辱を強制的に押し付けてくる。


「く…ぅぅぅっ……」


あまりの恥かしさにぎゅっと目を瞑り、かぶりを振って髪を乱す。

常に目を開けて、敵の姿を捉えなさいというアマゾネスの鉄則は意中から霧散していた。



それでも培われてきた身体感覚は過敏に、自身どころか、身に着けている衣服の状態までをも彼女の意識に把握させてくる。



ぴん、と装衣の、リーフスカートのひら一枚を引っ張られた。



直後に、むしゃり。

と、認識範囲が『減る』







   

 

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